プレイベント

レジデンスアーティスト01:千田泰広

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千田さんは、長野県の山中にアトリエを構えながら、自然と向き合って空間を再構成する作品を得意とするアーティストです。彼の作品では、水や木・石など自然のなかにある基本的な素材が重要で、種子島のプランでは海岸に打ち寄せられている珊瑚礁の小石に着目していました。
千田作品ワールドではとりわけ太陽の光に関して深い関心を寄せていて、かつてない光体験の場が登場しています。

千田さんが約一ヶ月間種子島に滞在して完成した作品は、細い草の道を分け入って草原にそびえ立つ建物の内部で鑑賞する作品です。たくさんのパイプが突き刺さって見えますが、このパイプのいずれかが太陽の光度と一致したときに建物の内部に光が差し込んで、終端に取り付けられた40色のガラス玉を輝かせ、対面の壁にその模様を映し出すという仕掛けです。太陽の動きとともに光を投げかけるパイプは交代してゆき、投影される模様も変化します。

千田さんはこの作品を「地球の自転による太陽光の映画館」と呼んでいます。まさに穴蔵のような小劇場で差し込んでくる太陽光を楽しむ作品。ほぼ2分30秒ごとに移りゆく光の模様を見ながら、ゆったりとした時間のなかで太陽の動き(実際には地球の動き)を感じ取ってほしいと話していました。タイトルの「1,443km/h」は、作品が設置された広田遺跡が位置する地球の自転の速度。地球上に立っているわれわれから見れば、相対的に太陽の速度となります。空間内の太陽光の変化は、じつは音速を超えたこの速度によるものだということです。

広田遺跡ミュージアムの展示室では、宇宙芸術分野を見通すために「宇宙芸術クロニクル」の展示がありました。宇宙芸術は新しいジャンルと思われがちですが、宇宙開発・天文学の発達の歴史と照らし合わせて、宇宙と芸術の関わりを過去に遡ってみると、古代文明の時代にもそれを見つけ出すことができます。古代エジプトのピラミッドは東西南北の方角にきわめて正確にあわせて建築されていて、本体の傾斜角なども天体の運行と合致するという構造になっていることが調査でわかっています。つまりピラミッドは宇宙を取りいれた「宇宙建築」であったということ。この作品も太陽の運行角度を計算して設計されているという意味でいえば、ピラミッドと同等のものであるといえるでしょう。天空の営みを取りいれて、本体の形状やパイプの向きなどを精緻に設計しているところをみると、彼が建築学科出身であることもわかるような気がするのです。

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  • 展示作品:「1,443km/h」2015
  • 展示会場:広田遺跡ミュージアム
  • 展示期間:2015年10月31日~2016年3月○日
アーティスト略歴

千田泰広(ちだ やすひろ)
武蔵野美術大学建築学科専攻。高所登山やケービングなどのフィールドワークを行い、「空間の知覚」と、「体性 感覚の変容」をテーマに空間を実体化する作品を制作。他、建築、舞台美術、空間演出等を行う。現在、長野県の山林に環境と一体となったアートパークを建設中。